バリ島「PDIP(闘争民主党)」Memo Bali

バリ島の近況の続きです。(その1)は天気と両替レートについて書きました。
(その2)は最近の火災、来年の総選挙についてです。

火災

長引く乾季により、島内あちこちで自然または人為的な火災が発生しています。

11/9(木)バリ州地域災害管理庁(BPBD)レンティン庁長は「2023年10月だけで州内全県にまたがり91件の災害が発生した」と述べました。「森林および土地火災は前月から48.35%増加。総面積241.83ヘクタール、推定損失額は32億ルピア(1円=Rp100として約3,200万円)におよぶ」としています。
特にスウン地区の埋立地(ゴミ集積場)の焼失は深刻でした。

・BaliPost(以下BaliPostはインドネシア語):2023年10月の数十件の災害がバリを襲い、損失は32億ルピア

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ゴミ集積場の火災

◆デンパサール・スウン地区

10/12(木)午前11:30頃 デンパサール市スウン地区にある島内最大の埋立地(ゴミ集積場)で火災が発生しました。駆け付けた警察官が初期消火、その後すぐ5台の消防車が出動して放水し、翌13(金)にはヘリコプターからも連日放水を行いました。

・BaliPost:速報 スウンが火災 / 消火のためにヘリコプターが特別飛行

周辺に濃い煙と臭気が充満。風向きによって現場に近いクタやサヌールまで影響を及ぼします。
また火災中はゴミの収集や処理が滞り、道や空き地に膨大なゴミの山ができました。
ゴミを載せたトラックも数日並んでやっと1台ずつ捨てられる状態に。

・BaliPost:臭気や煙による汚染、住民は直ちに廃棄物処理を求める / 火災がうまく処理されず、空き地にゴミの山 / ゴミ問題で観光業が混乱

結局34日間 燃え続け、11/15(水)の降雨により鎮火しました。
総面積32ヘクタールのうち12ヘクタールが消失。ゴミの高さはもっとも高いところで30mに達していたようです。
火は消えたものの、ゴミ処理能力はすでに過負荷で1~2年後にはあふれて対応できなくなるとのことです。

・BaliPost:火災は鎮火に成功、スウン埋立地の廃棄物処理は正常に戻る / スウンに人材と機材、火災対応は完了を目指す

◆ヌサペニダ・ジュングッバトゥ地区

11/11(土)の夕方、人気観光地ヌサペニダ島にあるジュングッバトゥ地区の埋立地(ゴミ集積場)で火災発生。
翌12(日)朝にいったん鎮火したものの、同敷地の他のエリアから火の手があがりました。

消防隊と警察が消火活動を行いましたが、干潮で海水が後退し、ホースに吸水できず。伝統村の給水タンクも協力したものの、水が足りず、1.2ヘクタールをほぼ焼き尽くしました。

周辺の住民は濃い煙で呼吸系の不調を訴え、外国人観光客も不安に。また大気汚染の懸念も出てきました。
続報が掲載されていないのですが、鎮火したんでしょうか?

・BaliPost:ジュングッバトゥ集積所が再び燃焼、停電で水源の制約 / 環境を破壊するジュングッバトゥ集積所は廃棄物緊急事態

◆ゴミ集積場の問題点

「火災は初動が大事!すぐ消火すれば良いのに」と思いますよね?
ウダヤナ大学 環境工学研究員カデ ダイアン氏によると「蓄積されたゴミ、特に有機廃棄物によってメタンガスが発生。太陽などの熱により燃え広がった」とのことです。
ガスの発生により、放水してもなかなか消火できなかったんですね。ヘリコプターからの放水はインドネシア環境林業省から提供された化学物質入の消火水だったようですが。

・BaliPost:ゴミ処理所の管理ミス、処理されないゴミの山

メタンガスについて調べてみると、「可燃性ガスの一種。空気中で、一定の濃度に達すると発火や爆発に至る」って。ひょええええ。

・厚生労働省(日本語):メタン
・新日本法規(日本語):安全と悲惨の分かれ道

そもそも論。
バリ島内の埋立場は「衛生埋立法(ごみ投棄後ただちに土をかぶせる)」に基づいて建設されました。しかし、コスト・人材・インフラ制約などにより、「管理型埋立処分(有毒でないゴミを汚水が流れ出ないようにして投棄)」になり、今は「オープンダンピング方式」になっています。
オープンダンピングとは、ゴミを分別せず、そのまま捨てることです。これにより軽いチリやビニールは風で飛び散るし、悪臭やメタンガス等が発生します。さらにハエやネズミなどの病害虫・害獣が繁殖します。良いことなし!

・国立環境研究所(日本語):途上国のゴミ捨て場の改善に関する研究

分別されてないことで、電池やスプレー缶などに引火して被害が大きくなる可能性もありますよねぇ。
またコロナ明けで外国人観光客が増えて、ゴミの増加が強調&注目されていますが、大きな祭事で大量のお供え物や飾りが出ている点もスルーできません。うちのほうはハリラヤのあとすごい量が捨てられてますもん。お供えや飾りこそかさばるので、燃やせば小さくなりますね。

◆他国から支援の申し出

廃棄物問題を見かねたイギリス代表から「これは国際観光地としてイメージに関わる問題。最善の解決策を見つけるために協力したい。これまでポルトガルやアルバニアなどでも導入して実績がある」との提案がありました。
が、来年の総選挙に向けて、すでに州知事と副知事は解任され、代理運営中です…。どうすんの、これ。先送り??

・BaliPost:知事代理、廃棄物問題で英国との協力を模索

以前も書きましたが、あてくしは日本のODA(政府開発援助)または民間企業の協力をうけて処理施設をさっさと作るほうが良いかと。その際はプラスチックも燃やせるタイプしてほしいです。待ったなしの状況ですよね。

山間部の火災

乾燥により、山間部でも火災が発生しています。

◆キンタマーニ高原

9/18(月)夜にバンリ県キンタマーニのバトゥール地区で火災が発生。原因は住民が燃やしたプラスチックや枯葉から丘へ燃え広がりました。消防車2台が消火活動を行い、住宅地への引火はぎりぎり免れた模様です。

・BaliPost:バトゥールでゴミの山に火がつき、火災の延焼を防ぐために消防車2台が出動

◆アバン高原

10/1(水)バンリ県キンタマーニのバリアガ(バリ島先住民族)が住むトルニャン付近のブキッアバンで山火事が起きました。火災は道路まで迫りましたが、高圧水を噴射すると崖が崩れ落ちる心配があるため、消火活動は慎重に行われました。
火元は住宅街から離れた道のない傾斜地。自然発火と思われます。その後、火の粉が落ちて枯葉や茂みに燃え移りました。

・BaliPost:ブキッアバンの山火事、トルニャンの道路に隣接、消防車2台が出動

◆アグン山

10/12(木)午前中 カランガッサム県にあるバリヒンドゥーの霊峰アグン山の斜面で煙が上がっているのを監視機関が発見。その後 鎮火したように見えましたが、夕方に再び煙が大きくなり、5ヘクタールを焼失しました。
原因は判明していません。登山客などによる点火か、木々が風でぶつかり合うことによる自然発火などが考えられます。

・BaliPost:アグン山の斜面、山火事が発生

◆ブンブラン高原

11/3(金)お昼ごろバンリ県キンタマーニのソンガン地区にあるブキッブンブランの南斜面から出火。夕方には鎮火しましたが、木々や茂みなど4ヘクタールを焼失しました。
原因は地元住民がゴミを燃やし、強風にあおられて急速に拡大したものとみられています。

・BaliPost:ブキッブンブラン森林の数ヘクタールが焼失

州政府は関係機関に火災対応を求める

バリ州マンドラジャヤ知事代理は「相次ぐ干ばつと火災にこれ以上被害が広がらないようすべての関係機関に協力を」と要請しました。また、「天然資源である水が枯渇しはじめている。火災で使用できる水も限られてしまう」とも述べています。

ここ数日は雨が降りはじめて少し落ち着いてきましたが、乾燥した時期は人為的な火事を極力起こさないよう、お互い気を付けたいものです。

・BaliPost:森林火災、土地火災、干ばつに対するすべての関係者に呼びかける

総選挙

(その1)でチラッと触れましたが、インドネシアでは来年2月に総選挙が行われます。
概要は以下の通りです。

2024年 インドネシア総選挙

選挙の種類
:大統領選(pilpres)、地方首長選(pilkada)、議会選挙(pileg)
任期
:2024~2029年<5年間>
選挙期間
:2023.11/28(火)~2024.2/10(土)<75日間>
投票日
:2024.2/14(水)

・BaliPost:2024年選挙の大統領と副大統領の候補3組を確定

以前書いたとおり、外国人に参政権はありません。KTP(身分証明書・居住者識別カード)保持でも不可です。
インドネシア国籍者のみ立候補や投票できます。インドネシア国籍に帰化した方は権利があります。

・プルウォレホ地区 市民登録事務所(インドネシア語):外国人とインドネシアのKTPの違いは何?

大統領選

11/13(月)総選挙管理委員会(KPU)は「2024年の大統領・副大統領」候補3組の出馬を正式に承認しました。
インドネシアでは正副の候補ペアを国民が直接投票で選出します。
NNA ASIAの記事が非常ぉぉぉにわかりやすいので、ぜひご一読ください。

・NNA ASIA(日本語):大統領選、候補3組出そろう(ジョコ氏長男は副大統領で出馬)

◆候補の組み合わせ

  • アニス・バスウェダン氏(ジャカルタ特別州前知事)×ムハイミン・イスカンダル氏(国民覚醒党)
  • ガンジャル・プラノウォ氏(中部ジャワ州前知事)×モハマド・マフッド氏(調整相)
  • プラボウォ・スビアント氏(国防相)×ギブラン・ラカブミン氏(中ジャワ州スラカルタ市長)

NNAの記事によると、これまでのインドネシア全土の世論調査では、保守派イスラム教徒とイスラム大衆組織から大きな支持を得てアニス氏×ムハイミン氏がリードしていました。
厳格なイスラムが台頭すると、ヒンドゥー教徒が多いバリ島、キリスト教徒が多いティモールやスラウェシ島は今より肩身が狭くなる可能性があります。パンチャシラ(建国五原則/多様性の中の統一)が継続されれば、他宗教は守られるはずですが。

・日本貿易会月報オンライン(日本語):インドネシアの「多様性の中の統一」

最新の世論調査によると、プラボウォ氏×ギブラン氏が支持率39.7%ともっとも高くなっています。
ジョコウィ大統領の長男ギブラン氏が現在所属している闘争民主党(PDIP)をまたいでプラボウォ氏と組んだだめ、現大統領支持派の票を集めて有利になりました。

・ロイター(日本語):インドネシア大統領選、プラボウォ氏が支持率リード広げる
・日本貿易振興機構 ジェトロ(日本語):プラボウォ国防相、ジョコ大統領の長男と組んで正副大統領選に立候補
・じゃかるた新聞(日本語):ギブラン出馬の衝撃

◆バリ島の支持地盤

バリ島はメガワティ元大統領の率いるPDIPの支持者が多いと言われています。メガワティ氏の祖母(スカルノ元大統領の母)が北部ブレレン県出身でバリ人の血を受け継いでいるからです(バリ人はバリ人大好き)。
ただ地域によります。ブレレン県とデンパサール市はPDIP派が多めですが、うちの近所(クロボカン)はゴルカル党の旗もよく見かけます。たしかカランガッサム県もゴルカル派が多かったような。

ジョコウィ大統領はこれまでPDIP所属でバリ人から圧倒的な支持を受けていました。しかし次期選挙で決裂するため、業績を認めて継続支持する派と、失望してガンジャル氏の支援に回る派に分かれるようです。

・BaliPost:ギブラン氏、PDIP経営陣からの辞任を求める数々の声に返答 / バリ島訪問のガンジャールは数百人の歓迎の舞 / ガンジャールとの出会い、バリ人はこう言う

また、メガワティ氏の「北部空港建設反対」発言を受けて、ブレレン県の一部住民がPDIP支持拒否の意向をSNSにアップしました。賛同者が増えるかは未知ですが、ブレレン県の人口が州内で断トツ多いため、票が割れる可能性が出てきました。

・BaliPost:PDIP候補の支持を拒否するバリ人のネット動画、コスター氏が反応
・バリ州政府(インドネシア語):行政区域-面積と人口

地方首長選(州知事・県知事)

バリ州知事ワヤンコスター氏と副知事チョッオカアルダナスカワティ氏は2018~2023年の5年間の任期を終了し、9/8(金)職位引継ぎ式を経て、知事代理サン・マデマヘンドラジャヤ氏へ業務を移管しました。
2/14の投票日まで約5ヶ月間ほど知事代理が運営していくことになります。

・BaliPost:ワヤンコスター氏がバリ新時代5年間の実績を語る / ワヤンコスター氏が開発政策の実施を要請

次期州知事候補者はまだ発表されていませんが、ワヤンコスター氏は2期目の出馬を考えているようです。

・KOMPAS.com(インドネシア語):2024年のバリ地方選挙、コスター氏は準備できているがPDIP次第

また、クルンクン県知事のニョマンスウィルタ氏も11/3(金)に辞任しています。
バリ州議会から立候補するためには2023年12月の任期までに辞任し、代理人に引き継がなければなりません。

・BaliPost:スウィルタ県知事が正式に辞任

そういう仕組みなので仕方ないものの、日本に比べて政治の空白期間が長いなぁ~という印象です。次の方が確定したら引き継げばいいのに。
ちなみに日本の場合は官僚や事務方が引き継ぎを行うため、当人はサインや押印して終わりみたいですね(知らんけど)。

議会選挙

11/3(金)デンパサールで開催された選挙管理委員会(KPU)を通じて、バリ州は18政党554人が立候補リストに登録されました。内訳は男性348人(62.82%)、女性206人(37.18%)です。

・BaliPost:バリ島、2024年の選挙に向けて554人の立候補者

ちなみに、日本の国会では女性の割合が、衆議院10.1%、参議院20.7%。
地方議会では、特別区議会27.1%、政令指定都市の市議会は17.2%。
ジェンダー・ギャップ指数(GGI)は144ヶ国中114位だそうです。

・内閣府男女共同参画局:男女共同参画白書(概要版) 平成30年版

日本に比べると、バリ州ははるかに女性の立候補者が多いですね。どれだけ当選するかは未知数ですが。
バリ人女性は仕事しつつ、バンタン(お供え物)を作りつつ、家事や育児をこなして、パワフルかつエネルギッシュ☆ もちろん男性も家事や育児に協力的な方が多い印象です。

あてくしはフェミニストではないので、「女性に活躍の場を!」と声高に叫ぶつもりはなく、「やる気のある方がやればいい」と常々思っています。無理に女性の数を増やしたところで、男性ほどの仕事がこなせるかはわかりませんし。
ただ、女性の存在感が増すことで現行の男社会に合わせるのでなく、より柔軟に、シンプルに、緩やかな変化が期待できるのかな、とは思います。

選挙効果

◆経済

選挙年は経済活動が活発化します。
キャンペーンイベントが増えて、たとえば横断幕やポスター、記念品、またケータリングサービスなどが必要になるためです。TVやネット広告の出稿も大幅に増加すると見られています。

・BaliPost:選挙年

そういえば、前回2017年には近所の空き地で候補者主催の無料イベントが連日連夜開催され、ジャカルタから来た有名シンガーやグループが大音量で歌ったり踊ったりしてました。えぇ、うるさかったです。

◆国民性

選挙に熱くなりやすい国民です。バリ人も例外ではありません。支持政党を巡っていざこざが起きる可能性もあります。よって州政府は来年のオゴオゴのコンテストの中止を検討しています(未確定)。

選挙後も結果に納得できない政党が暴挙に及ぶ場合があります。前回は敗北したプラボウォ氏が「選挙に不正があった」と結果を受け入れず、支持者による大規模なデモが行われました(たしか戦車まで出たような…)。

・在インドネシア日本国大使館:大統領選挙の集計結果発表に伴うデモの実施

事後の揉め事まで含めて「インドネシアの選挙」というようです。
無事に平和に終わるといいですね。

長くなったので、(その3)に続きます。
では、ごきげんよう。

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