バリ島「Tari Gambuh(ガンブー舞踊)」Memo Bali

「神々の島」の名にふさわしい祭事デイズが続いています(振り返れば7月からずっと)。
あちらこちらからガムランの音色が聞こえて、バリ芸能好きさんにはたまらない時季かと。そうじゃない方には宗教行事の通行止めと迂回で渋滞地獄…

先日、舞踊の師匠Ibu Sekar(スカール先生)に声をかけていただき、バリ島最古の舞踊劇「Gambuh(ガンブー)」を鑑賞してきました。
朝9時開始と聞いていたのに、珍しく早まって8時半スタート。しかも事前に聞いていた場所と異なり、寺院を探して乗り込んだらすでに1時間以上経ってました。全2時間の公演なのにぃぃ!

後半だけとはいえ、足を運んだ甲斐がありました。
Bapak Djimat(仮面舞踊のマエストロ・ジマット先生)一族の公演で、中堅以上のプナリ(舞踊家)による安定かつ魅せる演舞と、いぶし銀のプナブ(演奏家)による古典ならではの珍しい楽器の演奏。いやはや、眼福でございました♡

少しですが、その様子をおすそわけしまーす。

ガンブーとは

◆歴史

ガンブーはバリ島最古の舞踊劇です。
使われるガムランは、サカ暦929年=西暦1007年にすでにバリ島に存在していたと言われています。
踊りは1725年のロンタール(葉に書かれた手稿)に記載されているため、その前から有ったはずですが、特定されていません。あらゆる古典舞踊の源とされ、それぞれのキャラクターに特徴があります。高貴な人物の「アルス」グループは古代ジャワのカウイ語を話し、召使いの「ケラス」グループはバリ語を使います。

11世紀のワルマデワ王朝のウダヤナ王とその妻グナプリヤ ダルマパトニ王妃の統治時代に、宮廷が芸術活動を担い、庶民とともにその魅力を楽しみました。
しかし、1908年からオランダによる植民地化が始まると王宮の持つ力が激減。舞踊劇の公演がなくなり、芸術は衰退しはじめます。

ガンブー(Gambuh)は、”ガムラン(gamelan)”と”エンブー(embuh)”の2つの単語からできた言葉で、「失われたガムラン」を意味します。
古典芸能にありがちな、厳格で複雑かつパターン化された音と動き。現代舞踊のような華やかさや自由さはありません。基本の形から異なります。
これを継承できる踊り手が少なく、一時は絶滅の危機に瀕していました。実際に公演可能なグループは島内で数えるほどしかいません。
しかし近年は神聖な古典芸能復元のために、尽力する若者が出てきています。ただ、最初の関門であるカウイ語をマスターするだけでも一苦労だとか…。
1000年以上の歴史を受け継がないのはもったいないですよね(いうのは簡単)。

◆物語

インドの影響をうけたジャワ文明の物語です。
主なキャラクターは、パンジ王子、ランガ・ラウェ、アマド・モハマドなど。
このうちパンジ王子の物語は長編詩「マラット」を題材にし、もっとも頻繁に上演されています。

ジャンガラのパンジ王子と婚約者であるクディリ(ダハ)の王女プトゥリ・チャンドラ・キラナ(ランケサリ、スカルタジ、またはプトゥリ・クンチャナ)は、王女が森をさまよっているときに突風にさらわれて離れ離れになり、何年もかけてお互いを探します。彼らはついに戦場で出会い、変装を通してお互いを認識し、その後ずっと幸せに暮らす…そうです。

へー。初めて知りました。何度か見てるのに。
いやね、カウイ語とバリ語で全然ストーリーがわからないんですよ。先生に聞いたところでインドネシア語で説明されるし。
いつだか田んぼの女神様とヘビを生んだ女神様の話をドライブ中に延々聞いて、登場人物が多いうえに説明が難しく、車の運転に集中できなくて困ったことがありまして。それ以来、突っ込んで聞くのは命に関わるのでやめました(笑)心からじっくり見ればわかる…わけでもないですけど。

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ガンブー舞踊

この日の登場人物は9名(だったと思う)。1名を除き、男性ばかり。
パンジ王子はIbu Sekar(ジマット先生の姪・スカール先生)、敵対する荒型プラブはAgus(ジマット先生の直系の孫)が演じました。
Agusは過去ブログでも紹介していますが、若きプリンスの爽やかイケメン!だったのが、芯はそのままに年々厳かかつ渋みが増して良い演者になっています。今後のバリ舞踊界を担う存在になるんじゃないかと。

バリ島「Tari Gambuh(ガンブー舞踊)」Memo Bali
バリ島「Tari Gambuh(ガンブー舞踊)」Memo Bali
バリ島「Tari Gambuh(ガンブー舞踊)」Memo Bali
バリ島「Tari Gambuh(ガンブー舞踊)」Memo Bali

◆動画

動画を見てもらったほうが早いですよね。
WordPressの関係で30MBまで圧縮しています。画像がやや荒いかも。
つなぎ合わせたダイジェスト版で4分50秒です。

ガムランガンブー

ガンブーの見どころは古典舞踊に加え、ここでしかお目にかかれないガムラン編成にあります。

バリ島「Gamelan Gambuh(ガンブーガムラン)」Memo Bali

◆スリンガンブー(Suling Gambuh)

ガンブーといえば、この長い笛=スリンガンブーです。長さ75~100cm、直径4~5cmの竹製。
短いスリンと同じく、連続で吹き続けますが(呼吸を止めない)、長い分吸うのも吐くのも大変なんですって。
この日は6本。場面によって4~6本に増減していました。

◆ルバブ(Rebab)

奥にいるのは、擦弦楽器(さつげんがっき)のルバブ。弓でこすって音を出す弦楽器の1種です。

このルバブとスリンガンブーがメロディを奏でます。

バリ島「Gamelan Gambuh(ガンブーガムラン)」Memo Bali

◆グマニッ(Gumanak)

写真左(メガネのおじさん)が小さな金属棒で叩く、4つの棒が並んだ青銅製の打楽器。
インド系ジャワから伝わった楽器の中で最も古い部類といわれています。
可愛らしいけども存在感のある音で装飾します。

◆クニール(Kenyir)

その奥にいる小さな鉄琴。左手は1本のパングル(バチ)、右手は三股に分かれたパングルを持って演奏します。すごくない?1度に3つの鍵盤叩けちゃうんですよ。

◆グントラン(Gentorang)

奥に見える鈴なりの鈴。青銅の鐘の木です。アクセントにジャラランと鳴らされます。
これはワヤンウォンで見たことありますわ。

ほかに打楽器のクンダン(Kendang)や、クンプル(Kempur)、カジャール(Kajar)などがいました。

◆動画

こちらも動画で見てもらったほうが早いですね。
つなぎ合わせたダイジェスト版で1分18秒です。
短いですが、雰囲気はわかるかと。

奥の椅子に座ってらっしゃるのが、仮面舞踊のマエストロ・ジマット先生です。
足を悪くされたので舞踊を引退。歌をうたわれることもありますが、この日は笑顔で眺めていらっしゃいました。

バリ舞踊は神聖な順に「ワリ」「ブバリ」「バリ・バリアン」の三様式に分けられ、ガンブーは「ブバリ」に属します。
一般的にブバリは寺院内のジャボ・トゥンガーと呼ばれる中庭で行われますが、この日は奥の院にあたるジェロアンでした。
プダンドゥ(高僧)やマンクー(僧侶)たちが横でひたすら儀式を執り行い、一般教徒たちはジャボ・トゥンガーや集会所にあたるワンティランで待機。ほぼ観客のいない中で神様へ奉納されるという、ある意味正統な、シュールな光景でした。
また機会があれば鑑賞したいと思います。

では、ごきげんよう。

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