バリヒンドゥー教徒にとって宗教行事の多いシーズンですね。さすが神々の島。行く先々で通行止めや迂回による渋滞が…(以下省略)
ところで奥さん。ちょっと聞いてくださる~?
あてくし、奉納演奏に欠かせない伝統楽器ガムランを習い始めてかれこれ10年ぐらい経ってるんですよ。コロナを理由に3年間ほどお休みして、今年再開(実質7年な)。
えぇ、一向に上手くなりませんの。謙遜じゃなくて。なんで?
ガムランの師匠・コップリン先生に「速く叩けない」「曲が覚えられない」などと愚痴ったところ、まずはガンサの正しい叩き方を教えてくれました♪
えっと…なんで今さら?なんで最初に教えてくれないの??とツッコミたい気持ちを抑えつつ。
この叩き方はバリ島内の全プナブ(演奏家)が行っているわけではありません。エリア・個人によって相当差があります。あくまで彼の教えです。
わりと速く叩ける可能性が高いので、伸び悩む初心者~中級者は実践してみてください。上級者は「そうそう」とか「へぇこんな方法があるのか」とおさらいにどうぞ。
教えてくれた先生について
長年師事しているコップリン先生は、ギャニャール県バトゥアン村の方。
トペン(仮面舞踊)の第一人者と言われるジマット大先生の第2子・次女マデさんの旦那様。ジマットさんからみて、娘のお婿さんにあたります。
性格はものすごく穏やか。これまで練習中に1度も叱られたことがなく、怒った顔も見たことがありません。常に我慢強く、丁寧に、おもしろく教えてくれます。
奥様も「結婚してから1度もケンカしたことがない」というほど優しい。
“バリ人あるある”で聞いたことは教えてくれますが、聞かないことは教えてくれません。外国人がどこにどう疑問を持つのかわからないのかも。
もしくは最初から型にはめて萎縮させるより、まずは楽しくやってほしいという親切心。
英語は若干できるものの、日本語は超カタコト。でも身振り手振りで理解できると思います。
毎朝バトゥブランのバロンダンス「Barong & Kris Dance Jambe Budaya」で演奏しています。
個人レッスンを希望される方は午前11時以降のご予約を。
ガムランついて
そもそもガムランって何?ガンサって何?という方へ。
以下、大雑把な説明。
ガムランとは
ガムラン(Gamelan)はインドネシアの伝統楽器を指します。中部ジャワ・西部ジャワ・バリの3様式があります。
プナブである義姉の旦那様は、アプリのガムランを見て「これはジャワ様式だな。バリじゃない」とすぐ見分けてましたが、こちとらサッパリわからずw
一般的に、ジャワは宮廷儀式などで王様へ向けてスローテンポで演奏し、バリは寺院儀式のために神様へ向けてアップテンポで演奏します(必ずしもそうとは限らないけども)。
ゴンとは
バリ島ではガムランをゴン(Gong)と呼びます。
大人数編成はゴン・グデ、少人数編成はゴン・チュニッ。たいてい各デサにはこの2編成のガムラン部隊がいるはず。
1920~1930年代にかけて、よりテンポの速いガムランのゴン・クビャールが人気を博し、今ではこのスタイルが一般的になっています。
それぞれバリ語で、グデ=大きい、チュニッ=小さい、クビャール=燃える・破裂する、という意味だそうな。
ほかに、古典のスロンディン、影絵演奏のグンデル・ワヤン、小さな竹琴のリンディッ、大きな竹琴のジェゴグなどなど様々な種類があります。
ガンサとは
ゴン・クビャールは主に打楽器で構成されています。
さまざまな打楽器がありつつ、今回は鍵盤楽器にフィーチャー(全部説明するとすごい量になるので)。
鍵盤楽器の1つにガンサがあります。
- ウガール(Ugal):10鍵。センターにいるリーダー。主旋律を奏でる
- ガンサ・プマデ(Gangsa Pemande):10鍵。メロディーを装飾する。カンティランより1オクターブ低い。高速になるとポロス(表)とサンシ(裏)に分かれて演奏する
- ガンサ・カンティラン(Gangsa Kantilan):10鍵。鍵盤楽器の中で最も高い音を出す
ほかにジェゴガン(Jegogan)とジュブラグ(Jublag)という5鍵ずつの楽器があります。
ガンサにはプマデとカンティランがありますが、通常プマデをガンサと呼びます。
余談ですが、バリ人はガンサを「ガンソ」と言います。語尾のaはoと発音するためです。
ガンサの叩き方
単に座って叩けばいい!と思ってました。でも違うんですね。
ちなみに、ガンサは左の鍵盤がもっとも大きく、右へ行くほど小さくなります。この日、先生は生徒と鏡になってて逆向き。それでも弾けちゃうんだからすごい!
ガンサの向かい方
- 鍵盤の正面に座り、ハンマーのようなパングル(バチ)を右手に持つ
- 右ヒジと鍵盤がほぼ同じ高さになるように意識して保つ。ヒジを下げすぎたり、上げすぎない
- 右の脇は適度に開ける。ぴったり閉めたり、大きく開けたりしない
- パングルで叩く際は、主に手首を動かす感じ。腕全体を大きく動かして使わない。
実は、これまで腕全体を大きく動かしてアクロバティックに叩いてました。TVゲームもコントローラーごと右へ左へ動かしちゃうタイプです、無意識に。
それだと高速になったとき、振りが大きすぎてスピードについていけなくなりますね。
パングルの当て方
各鍵盤のド真ん中をパングルで叩いて音を出します。
当てる角度にも決まりがあります。
ヒジを下げてしまうとパングルのあたる場所が全体ではなく部分的になり、美しい音が出ません。
ヒジを鍵盤とほぼ同じ高さにすると、パングル全体が垂直にあたるため、均一に美しい音が鳴ります。
パングルの持ち方
ご自身の叩きやすい持ち方で良いと思いますが、基本として。
- パングルの持ち手(棒)の端が、手のひらから大幅にハミ出ないように握る。だいたい2/3ぐらいの位置
- 親指と人差し指が起点になるように棒を持つ(人差し指は棒の上部に沿ってピストル風に持っても良い)
- 中指・薬指・小指は添える
パングルの振り方
何がびっくりって、あーた。この振り方を見て「あれ?そうなの?そうやって使うの?」てな新しい発見があったことです。
- 親指と人差し指を起点に、手首を動かしながらパングルを上下に振る
- 腕はほぼ動かさない
ずっと「手首を動かせ」と言われてましたし、実際プナブの多くは手首のみを動かして叩いています。
でも、この動画を見る限り、手首だけじゃなくて起点をもとに振ってるんですよね。いわゆる”遊び”があるおかげで、大きな動作をせずとも細かく動かせるようになります。
箸と同じ。人差し指と中指で正しく挟めると、その他の指は添えているだけで大きく動いたり、細かいものを掴めますもんね。
- 鍵盤の中心を垂直に叩く
- 次の音を叩く際に、前に叩いた音を左手で掴んで止める
叩きっぱなしだと音がフォワンフォワン鳴り響いてしまうため、次の音を叩くと同時に、前の音を止めます。
これ、初心者は「止めねば!」と躍起になりすぎて頭が混乱してしまったり、早く止めすぎたりしてしまいますが、慣れるまでは右手優先で鳴りっぱなしでも良いそうです。あくまで、音が重なるのを避けるために止めるにすぎないので(もちろん止められるに越したことはない)。
先生に聞いたところ、「慣れてるバリ人は左手がオートマティックで動くから止めるのを意識しない」そうです。とほほ…
ガンサの実演
最後に先生が実演してくれた超ショート動画を掲載します。
曲は歓迎の踊り「ペンデッ(Pendet)」の一部です。
実際はプナリ(踊り手)に合わせるため、鍵盤を見ることはほぼなく、顔を上げて演奏します。
これはどのプナブもそうです。それが普通です。とほほ…
そのうち、またガンサの基本②を綴りたいと思います。気長にお待ちを。
では、ごきげんよう。