
先月義姉(家人の兄姉の1人)と旦那様がバイクの二人乗りで事故を起こして緊急入院。
北部シンガラジャ市内にあるブレレン県立総合病院へお見舞いに行きましたの。
2つ隣室には家人の地元の友達が偶然入院中。彼はバイク単独事故の手術翌日で、左手が通常の1.5倍ほど腫れてました。
上記の方々は国民皆保険の医療制度=BPJS Kesehatanに加入していたおかげで、医療にかかわる診察・手術・入院・薬代は無料。万一、集中治療室(ICUなど)に入っても患者の負担なし。
昔は全額先払いしないと簡単な手当すら受けられませんでしたね。費用が足りず、手術用の針と糸のみの麻酔抜きだったり、入院したものの投薬なしで寝たきりだったり…。
その時代を考えると本当にありがてぇシステムですよ。
BPJS Kesehatanは3等級に分かれていて、通院治療は差がないものの、入院治療は病室等が異なります。
実際、目の当たりにして、「一番下のレベルは外国人にキツくね?」と思いました。いや、大丈夫な方は大丈夫でしょうけど、あてくしは無理ですわ。
この記事ではBPJSの概要と等級差について体験から解説します。
BPJSとは
ご存じの方も多いと思いつつ、改めて書き出しますね。
「すでに知ってるよー!」という方は読み飛ばして次の項目へどうぞ。
制度について
◆ 名称
インドネシアの国家社会保障制度=SJSN(Sistem Jaminan Sosial Nasional)は現在2種類です。
1つは医療保険の「BPJS Kesehatan(Badan Penyelenggara Jaminan Sosial Kesehatan)」、もう1つが雇用保険の「BPJS Ketenagakerjaan」です。
BPJS Kesehatanはインドネシア読みで「ベーページェーエス クセハタン」と呼ばれています。
・BPJS Kesehatan(以下、インドネシア語)
◆ 歴史
インドネシアには戦後(独立後)から公務員とその家族のみ適用される公的な健康保険がありました。
しかし、多くの先進国や急速な発展国で実施されている「国民皆保険制度」にならって、2014年に公務員だけでなく民間企業の従業員や個人事業者、さらに貧困層まで全国民を対象とする新制度が正式に施行されました。
これにより、公平で包括的な健康保険の実現と維持を目指しています。
・BPJS Kesehatan:歴史
◆ 加入対象
インドネシア国民とその家族、6ヶ月以上就労する外国人に加入義務があると、BPJS法第14条で定められています。
ただし、貧困層や障害者など援助が必要な方は中央政府の拠出金により自己負担なくカバーされます。
・BPJS Kesehatan:参加者
ここの肝は、日本を含む外国籍であってもインドネシア人の”家族”または”半年以上の企業就労者”であれば加入義務が生じるという点です。
家族の場合、夫のみor妻のみor子供のみの単独加入は不可。原則、核家族単位で入らないといけません。
企業就労は正社員だけでなく、研修などで6ヶ月以上賃金が発生する場合も適用されます。いわゆるワーキングビザ(オーナービザ含む)、投資家ビザであれば必須。
逆に、外国籍のたとえば日本人同士のご夫婦で企業所属でない場合は加入できません。会社を通してのみ申請可能です。
BPJSがスタートした直後は外国人も希望すれば入れたんですけどねぇ。当時タイミングよく加入した方は毎月支払っていれば継続できます。
◆ 掛け金
公務員・企業雇用者・個人事業者などの区分により、毎月の掛け金が異なります。
・BPJS Kesehatan:掛け金
| 対象者 | 月額 | クラス | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| 公務員(政府機関勤務) | 賃金5%(雇用主4%、本人1%負担) | I |
| |
| 企業雇用者(民間企業勤務) | 月給Rp4juta以上 | 賃金5%(雇用主4%、本人1%負担) | I | |
| 月給Rp4juta以下 | II | |||
| 個人事業者・非労働者 | Rp150,000 | I |
| |
| Rp100,000 | II | |||
| Rp42,000(本人Rp35,000、政府Rp7,000負担) | III | |||
| 補助受給者 | Rp0(政府負担) | ? | ||
我が家は個人事業者・非労働者に該当します。
入会時に「クラスの違いは?」と聞いたところ「通院治療は同じ。入院時の病室等が異なる」との説明を受けました。
「入院なんてそうそうしないよなぁ」と思いつつ、とりあえず真ん中のクラスIIを選択。毎月10万×2人分=20万ルピアを銀行アプリ経由で払ってます。
以前のブログにも書きましたが、あてくし”カード付帯の海外旅行保険”と”日本の国民健康保険”に加入しているのに、BPJSまで入る羽目に。だってノタリス(公証人)で書類を作成するのにBPJS加入証明がないとダメだと。家族単位につき、家人のみ加入はNGでした。なんなん、これ?
◆ 適用範囲
以前は「Kartu Indonesia Sehat(カード)」でしたが、現在は「Mobile JKN(アプリ)」を提示することになっています。
カードの新規発行はなくなりました。すでにお持ちの方は提示可です。
・BPJS Kesehatan:適用範囲
● 通院
BPJS加盟病院の中から、登録時に「一次医療施設=かかりつけの指定医」を1つ指定します。基本は個人病院です。
病気やケガの際は、指定医にて医療行為(診察・手術・投薬など)がキャッシュレスで受けられます。
指定医で治療できない場合は、中規模病院または専門医など「高度医療施設」への紹介状を書いてもらいます。紹介状があればキャッシュレスになります。
ただし、高度医療施設ではBPJS患者は後回しにされるという噂も。
美容目的、薬物・アルコール依存の治療、有効性が証明できない伝統医療などは適用外で自費治療です。
処方箋はジェネリック薬が優先で、日数も限定されます(これまでの受診では3日分がほとんど)。
● 入院
指定医に設備・施設がある場合は、そちらに入院できます。
緊急時などは指定医を飛ばして、高度医療施設にて処置が受けられます。集中治療室(ICUなど)などの利用も無料です。
◆ 加入者・施設数
2025年8月末時点で、インドネシア全土の加入者数は281,598,621人(2億8千万!郷ひろみもびっくり)。
一次医療施設数は23,578軒。高度専門医療施設数は、主要病院が3,157軒、薬局・眼科診療所が5,995軒です。かなり多く見えますが、インドネシアは国土が広いのでね。
・BPJS Kesehatan:データ
2024年中にインドネシア総人口の98%加入を目標にしていましたが、達成したかは不明です。
村落・不利地域開発・移住大臣規則2022年第8号に基づき、参加拡大サポートが行われています。
あー、だからノタリスで書類発行時に強制されたんだな。外堀から埋める作戦か。
・BPJS Kesehatan:推進計画
等級による差
入会時に「通院治療は同じ。入院時の病室等が異なる」との説明を受けていたため、頭ではわかっていたのですが…。
義姉夫妻はクラスIIIに加入。庶民にしては金回りが悪くないのに、病室が質素で驚きました。
薬剤師の姪っ子いわく「最下のクラスIIIだと選択肢が大幅に狭まるから仕方ない」とのことです。
◆ 病院
ブレレン県の中心部シンガラジャの場合、BPJS加盟の高度医療施設は公立の「RSUD Kabupaten Buleleng(ブレレン県立総合病院)」のほか、私営の「RS BaliMed Buleleng(バリメッドブレレン病院)」などもリストに含まれます。
が、クラスIIIだと選択権はなく、公立病院のみ。クラスII以上で私営を選択できるそうです(他県は知らん)。
病院による医療行為の差はないと言われていますが、できれば新しくて、設備が揃っていて、専門医がいる病院が良いですよね。
◆ 病室
大部屋でした。夫妻2人で1部屋だったのが救い。
2つ隣室の友達は4人部屋で、対角線上のベッドにほかの患者(同性の若者)がいました。
それぞれの家族が病室の床や廊下に待機(寝泊まり)しているのと、見舞い客が次々訪れるため、常に誰かがいる状態になります。
病室にエアコンはなく、扇風機のみ。それも1部屋に1台。ぬるい空気をかきまわしていました。ドア全開で、窓は一部開きっぱなし。
乾季だからまだしも、雨季の蒸し暑さの中で高熱が出たら、さらに悪化しそうですよね。ただでさえ北部は赤道に近いから南部より暑いのに。
クラスIやIIの病室は未確認です。
エアコン付きで完全個室のVIPまたはVVIPルームはクラスII以上で差額を払えば可能ですって(他県は知らん)。
差額の調整
より良い医療を受けたい!VIPまたはVVIPに入院したい!という方は、民間保険会社と政府が差額を調整する「COB(Coordination of Benefit)」というプログラムがあります。
民間保険会社へ月々の保険料を払うことで、BPJSに加盟していない民間病院での医療行為や、入院時の病室代などの超過分(差額)をカバーしてくれます。
手厚い補償をお望みであればご検討を。
・インドネシア保健省(インドネシア語):JKNと保険会社の差額保険が正式に開始
感想まとめ
◆ 日本での入院
今夏、日本で入院していた旨をブログに書きましたが、そこは4人部屋でした。個室、高いんで。
日本の医療機関はいまだにコロナ対策を行っているため、見舞い時間や人数は最小限にとどめられています。よってインドネシアのように患者以外の誰かが24時間付きっきりということはありません。
また、どの病室もエアコンが効いてて、空調管理がしっかりしています。院内で感染しちゃったら困るしね。
◆ インドネシアでの入院
いやー、今回義姉たちの入院を目の当たりして、クラスIIIは無理だと思いました。
意識がない状態じゃない限り、ゆっくり寝られないのは厳しいです。回復が遅れそうだもの。
こうなったらクラスII→クラスIにランクアップしたろか!と迷い中。毎月の掛け金がね。
◆ 民間の保険
家人と義母はインドネシアで民間のサンライフ保険に加入しています。義姉がかつて保険外交員だったため付き合い加入。でも義母は公務員の遺族で病院代がほぼかかりません。何のために入ってるんだか。
あてくしは日本の国保に加え、日本の共済保険と民間のアフラックとオリックス保険に入ってます(すべて掛け捨てで安いぜ)。
何もなければそれに越したことはないですが、万一のときに焦らず済むように。備えあれば憂いなし、ですよ。たぶん。
◆ バイク事故
バリ島内でバイク事故が多発しています。ちょっと話すと出るわ出るわ。
「後続車にぶつけられて指を骨折、当分踊れなくなった」とか「山の下り坂でブレーキがきかず雑木林に突っ込んで擦り傷だらけ」みたいなものから、「親戚の意識戻らずサンラー病院に3週間入院中」「知人が道路の穴ぼこの段差でバイクごと飛んで即死」とか((((;゚Д゚)))
チャングーエリアは深夜から明け方にかけて酒酔い運転の事故が頻発しているようです。「用事がなければ0時過ぎは家を出ないほうがいいよ」と言われました。こわっっ!
そうこう言いつつ、シンガラジャまで渋滞を避けるべくバイク2ケツで行きました。テジャクラの義実家へ寄ったのでトータル5時間走行。
全然渋滞してねーし、翌日は全身筋肉痛になりました。
では、ごきげんよう。

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